2013年09月26日

London Pigeon’s Art Views Vol.3

“Bournemouthの海を見に行こうよ!” 近所に住むSandringham(ハト)が、そんなとんでもない提案をしてきます。ボーンマスっていったら東ロンドンのDalstonの家から南西に97マイル(156km)。そんな長距離と思ったものの、ハトの血が騒ぎます。我々ハトは太陽の位置をもとに方向を知る能力と、方位磁針のような磁気コンパスを脳に内蔵しているんです。翼には自信があるので今から飛べばティータイムには浜辺につくはず。

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Spiegelei-on-Sea ©Jem Finer

へとへとになって浜辺に到着!海に砂浜、ビーチハット、砂遊びをする子供たちと思い描いた通りの風景。でも、なんか違和感があるのはそのビーチハットの頭に乗っている輝く巨大な玉。その屋根の上から一羽のカモメが、“なか入ってみなよ。”と誘います。

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Spiegelei-on-Sea ©Jem Finer


扉の外で順番を待っていた人たちに紛れハットの中へ。階段を上り、ドームのようになった玉の内側に入ってみると!はじめは灰色の世界しか見えないのですが、次第に目が慣れてくるとそこには浜辺で遊ぶ人たちの姿や桟橋が、逆さまにぼんやりと浮かび上がってきます。実を言うとこれは、Jem FinerのSpiegelei-on-Seaというアート作品。ピンホールカメラと同じ、 壁の一カ所に空けた小さな穴を通して外界が上下逆さまに映し出される、カメラ・オブスクラという仕組みを利用したもの。カメラ・オブスクラは、カメラの原型であり、写真機が発明される以前、精密な素描を描くために画家達の間で使われ、更に19世紀には大型のものが観光のアトラクションとしても流行し、 今でも幾つかは英国内にも残っているとか 。ビクトリア朝時代に一気にリゾート地として発達したボーンマスの歴史を反映した作品といえます。また、Spiegelei-on-Seaは球体状のカメラ・オブスクラのため360度のパノラマ風景が映し出され、まるで誰かの瞳の中に入ってしまったかのよう。

外に出るとArt University Bournemouthとプリントされたパーカーをきたお姉さんが “Bournemouth Arts by the Sea Festival 2013”と書かれたパンフレットを広げてみせてくれました。 アートフェステバル開催中だったんですね!まわりを見回すとあちこちにアート作品や催し物が点在。3週間にわたるこのフェスティバルは今年で3年目、今回のテーマは“聴覚体験、音とパフォーマンスの融合”。

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The Shoe Shop ©Michele O'Brien


早速近くの公園に飛んでいくと、バンドスタンドで初老の殿方がハイヒールを試着中!この靴屋のワークショップはMichele O'Brienの劇団Valise Noire Storytelling Theatreによるもので、来場者はそこにある全ての靴を試すことができて、その靴にまつわる物語を聞くことができるというもの。

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©Mutoid Waste Company

公園でバンドの演奏や屋外展示作品をみてから桟橋で一休み。夕暮れ時の浜辺には大きな人だかりができていました。すると突然煙が上がって恐竜が出現!

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©Mutoid Waste Company


パフォーマンスはMutoid Waste Companyによるもので、走り回っている車輪をもったモンスターたちは廃車や元戦闘機などの廃棄物を使って作られていました。





すっかり暗くなったところで、最後はこちら、夜空に向かって宇宙人と交信するかのように三本足の彫刻各々が頭をくるくる回しながら音を奏でる、Ray Leeのキネティック作品“Chorus”をどうぞ。

ところで。宇宙との交信で思い出したのですが、一緒に飛んできた仲間のハトと交信するのをすっかり忘れてました。さてと、サンドリガム(ハト)は一体どこにいるのかな?
それではまた次回!


posted by ハト_pigeon at 15:25| Comment(0) | 日記

2013年09月02日

London Pigeon’s Art Views Vol.2

さて今日は前回紹介したDalstonから2マイル程南に飛んだWhitechapelの市場でのんびりしていると、目の前を長い赤い足の人間のお兄さんが歩いているのが目に入ります。自分の鳥足も赤いので何となく親近感を抱いて後をつけていくことに。


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Whitechapel Gallery外観


お兄さんは美しいタイル張りの建物のWhitechapel Galleryに吸い込まれて行きました。私も後に続きます。


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The Spirit of Utopia Exhibition


窓から中を覗くと中央奥ではろくろをまわしている人たちがいて陶芸教室か何かやっている様子。また写真には写っていませんが右隣には“Sanatorium”と書かれたサインが掲げられ、カウンセリングルームのような幾つかのセクションに区切られた部屋の前で白衣を着た人たちが受付をしています。


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“Improbable Botany”©Wayward Plants


ところが、中に入ってみるとまず目に入ったのはグリーンハウス!宇宙船の中のようなハウス内では不断草(スイスチャード)が栽培されているではありませんか。緑の葉はほうれん草のよう、赤、オレンジ、黄とカラフルな茎の部分はシャキシャキとセロリのようで美味しいんだなあなんて考えながら眺めていると、右にはトマト、左にはイチゴの栽培が。それぞれのハウスの下には月の満ち欠けの表示がついています。更に小学生のコメントとイラストの描かれた冊子が横に置かれ読んでみると、“ロボットさんへ、ぼくの予想では、ぼくのスイートコーンは満月に蒔いたのが一番よく育つと思います。 だって満月は新月よりずっと明るいから。” はて何のことやら?


実はこれ、アートプロジェクトで作品はロンドンを拠点とするWayward Plantsと地元の小学校とのコラボレーション作品 “Improbable Botany”(不可思議な植物学)。哲学者ルドルフ・シュタイナー(1861-1925)の提唱したバイオダイナミック農法から刺激を受けた作品。この農法は、土壌と植物、動物の相互作用だけでなく、天体の動きにも着目した農法で、太陰暦に基づいて種まきや収穫などを行い、また牛の角や水晶粉などの特殊な調剤を利用する有機栽培の一種。 天文学と植物学に魔法の要素の加わったこのプロジェクト、子供達の想像をかきたてるものであることは間違いないでしょう。


今回のこの企画展のテーマはThe Spirit of Utopia。前記の陶芸教室をギャラリーに持ち込んだ作品はシカゴを拠点とするTheaster Gatesの “Soul Manufacturing Corporation”、“Sanatorium”はアートと心理学を組み合わせた予想外?の治療を来場者に提供するメキシコ人アーチストPedro Reyesの作品。展示はまだまだ上の階にも続きますが、どうやらスタッフの一人がハトの私に気づいた様子。腰に付けた無線に手をかけたので、怖い警備員に追い出される前にギャラリーを離れることに。


Whitechapelといえば19世紀末の切り裂きジャック事件の現場、チャールズ・ディケンズのオリヴァー・トゥイストの舞台になったイーストエンドの貧しい地域としてよく知られていますが、現在では金融街シティにより近い移民の多いエキゾチックなエリアとして急速に開発の進んでいる地区です。そんななか、1901年創立のWhitechapel Galleryはロンドンで最も古い公営のアートギャラリーであり、 スペイン内戦に反対し1938年にピカソのゲルニカを展示、その後も国内外の質の高い現代美術作品を紹介してきたギャラリーでもあります。入場料は大抵無料。また、2009年にリニューアルした際には美味しいレストランも伴設オープンしたのでこちらもおすすめです。


それではまた次回!



posted by ハト_pigeon at 13:39| Comment(0) | 日記