2013年12月02日

London Pigeon’s Art Views Vol.5

“ごちそうが隠れている雲が、Serpentine湖の北に浮かんでいるっていう噂、聞いたことある?” 近所に住むGillete(ハト)がそんな夢のような話をはじめます。Serpentine湖といえば、1730年代にHyde Parkの中央を流れていたWestbourne川を塞き止めて周辺の11の自然の湖を統合し建造した湖で、当時の人工湖としては画期的な自然に近い姿でくねくねと蛇行しているためSerpentine(蛇)と名付けられたそう。ロンドンの中心にありながらこの湖は野鳥の宝庫でもあるし、早速Gilleteと雲の正体を確かめに行くことに。

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Serpentine Sackler Gallery

家から5マイル南へ、更に湖の北の起点のイタリアンガーデンを南下すると、噂の雲を発見!雲のまわりにはガラスのバリアがあって、中を覗くと白い雲の下は白い花で飾られ着飾った人間達が食事中。まるで結婚式場か何かのような雰囲気で、とてもハトが気軽に入れるような感じではなさそう。仕方なく隣のレンガの建物に目をやると“Serpentine Sackler Gallery”という表示が。どうやら数ヶ月前に新しくオープンしたという Serpentine Gallery の別館のよう。人ごみに紛れて中へ。

2.Elephant.jpg
©Adrián Villar Rojas

おおっと、いきなり巨大な象に踏みつけられそうに!しかもこの象、インドの神話のなかの世界を支える象のように建物自体を支えている様子。よく見ると粘土で造られた彫刻。

3.Wall.jpg
©Adrián Villar Rojas

更に進むと古墳の石室を彷彿させる建造物が。こちらもやはりカチコチになった粘土で造られていて、壁のあちこちにはひびが。重厚で狭い入り口から奥に向かいます。

4.Museum1.jpg
©Adrián Villar Rojas

中はありとあらゆる物が陳列されていて、まるで考古学博物館の研究室のよう。二千点以上の造形物 ー ミケランジェロの彫刻の複製、ロボット、猿、魚、人、宇宙人、電子部品などが、すべて手でこねられた粘土で精巧に造られていて、そのオブジェのなかには芽の出たジャガイモなどの植物が埋め込まれているものも。

5.Museum2.jpg
©Adrián Villar Rojas

これらはアルゼンチンの作家、Adrián Villar Rojas のインスタレーション作品、“Today We Reboot the Planet”(只今地球再起動中)。作品は全ての情報やテクノロジーが失われ、化石化してしまった現在の世界を表現したもの。そしてそれを発掘した未来の何者かが、ジャガイモなどの植物を埋め込んだりするという原始的な方法でなんとか化石に命を吹き込めないかと試行錯誤している状態を表現したようす。実際ジャガイモの芋の部分はキイロショウジョウバエや大腸菌などに共通する有機体として基本的な細胞組織をもっているため電子伝達実験に適しているとか。さらに土壌から精製された土である粘土を焼かずにあえてそのまま使用することで、生態系のはかなさ、壊れやすさを表現しているといいます。

また、床と壁に敷き詰められたレンガは、ギャラリーの建物が19世紀初頭に建てられたレンガで囲まれた軍用の火薬庫であったということから、故郷のアルゼンチンのRosarioにある伝統的なレンガ工場で職人達と手作りで制作したそう。



何と言っても我々鳥類は、約6,550万年前の恐竜が絶滅したことで有名なK-T境界絶滅イベントを生き延びた、恐竜の血を引く直系の子孫。テクノロジーなどに頼らずに生きているし、化石化なんて関係のない話と思いながら眺めていると、目の前の展示棚に化石化した雀のような小鳥の姿が。ハトは都市部で繁殖し、雀より人間に依存して生きているから人間と共倒れかも!?そういえばGilleteが見当たらない、まさかその辺で化石化してるのでは?と首を激しく前後に振りながら出口に進むと何とそこは最初に見た雲の下の世界。ごちそうが並び白い花が咲き乱れ、ここは天国?と思ったのもつかの間、速攻で黒いスーツを着た人間に追い立てられ、外の世界へ。

6.Serpentine2.jpg
Serpentine Sackler Gallery。左の増設部分がレストラン、右がギャラリー、建築はZaha Hadid

そこには湖のほとりで子供の食べ残しのワッフルをついばむGilleteの姿があり、ほっと鳩胸をなで下ろしました。

それではまた次回!


posted by ハト_pigeon at 17:41| Comment(0) | 日記
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