2014年01月06日

London Pigeon’s Art Views Vol.6

“マクドナルドの霊が出たんだって?マクドナルドの食べ物を食べ過ぎるとマクドナルドの亡霊になるんだってさ。” ところはDalston交差点近くのマクドナルド前。チップス(フライドポテト)をついばんでいる最中、そんな話をしかけてくるArcola(ハト)に気を取られ、ぽとりと落としたチップスは即座にArcolaのくちばしの奥へ。ハトはもともと果実や種子、昆虫などの小動物を食する雑食性。 また都会のハトは残飯も食べるため、ファーストフードを代表するマクドナルドのチップス、ハンバーガー、人間に共食いと言われるチキンナゲットも大好物。 Arcolaによると霊が目撃されたのは国立美術館のTate Britainの中だとか。テート・ブリティンはテムズ川ほとり、ミルバンク監獄の跡地に1897年に建てられた美術館。目撃したAshwin(ハト)も同時に消息を絶っており、噂の真相を探りにArcolaとテート・ブリティンへひとっ飛び。


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"Idol 2 (1956)" ©William Turnull


テート・ブリティンはダルストンから南へ4マイル程。入り口でまず出迎えたのはWilliam Turnbullのブロンズ製の鋳像 。亡霊ならぬハトの神様のような趣の像に首振り会釈をして先へ進みます。


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“Fernsehturm (2001)” ©Tacita Dean


様々な時代の英国絵画、彫刻の並ぶ部屋を次から次へと通り抜け、奥まった暗い部屋を覗くと展望レストランが映し出されているのが目に入ります。ごちそうが出てこないかなあと眺めているとどうやらレストラン自体が惑星のようにぐるぐる回っている様子。映像はベルリンテレビ塔(Fernsehturm)最上階にあるレストランを撮影したTacita Deanの“Fernsehturm” 。1960年後半に旧東ドイツ共産党政権に建てられ、観光名所にもなっているこのレストランは、東西統一以前は旧東ドイツで数少ない外食のできる場所であったとか。当初は1時間で一回転し、客は一回転すると出て行かなければならないという時間制限があったそうなのですが、現在では20分で一回転と回転が早くなったものの時間制限はなくなったといいます。


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“Work No.227: The lights going on and off (2000)” ©Martin Creed


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“Work No.227: The lights going on and off (2000)” ©Martin Creed


更に進むと体育館のように広々とした部屋にでますが、がらりとした部屋の中には何も展示してありません。キョロキョロ辺りを見回していると突然電灯が消えあたりは真っ暗に!いよいよ亡霊の出現か?とまたキョロキョロすると今度はいきなり明るくなります。電灯がついたり消えたり何だか気味が悪いといっても実はこちらもアート作品で、Martin Creedのターナー賞受賞の際の展示インスタレーション“Work No.227: The lights going on and off”。


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“The Chapman Family Collection (2002)" ©Jake & Dinos Chapman


その先の薄暗い部屋に足を踏み入れると何十体もある民族彫刻が目の前にぼんやり浮かび上がってきます。表示には“The Chapman Family Collection” とあるので、大英博物館のアフリカン・コレクションの特別展かなと一つ一つの彫刻をよく見ると!


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“The Chapman Family Collection (2002)" ©Jake & Dinos Chapman


なんと右も左もマクドナルドファミリー。そこには真っ赤なひげをはやしたチーズバーガーや、ろくろ首のような長い首をもち、獣のように鋭い牙むき出しにしたロナルド・マクドナルドなどが、薄笑いを浮かべて立っているではありませんか。マクドナルドの食べ物を食べ過ぎるとマクドナルドの亡霊になるって噂は本当だった?まさかAshwinもこのコレクションの中に?


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一ヶ月前にリニューアルオープンしたばかりのメンバーズ・バーの外観


パニック状態で慌てて部屋から飛び出すと後ろから警備員が追いかけてくるのが見え、前方にもまた別の警備員が仁王立ち。即座に翼を広げ羽ばたいて飛び立ち、螺旋階段を昇り、最上階の吹き抜けのメンバーズ・バーの先にあるドーム状天井を目指します。天窓の一つが開いていていることを願って。

読者の皆様、ロンドン・ハトのアートレビュー、お楽しみいただけましたでしょうか。半年にわたりご愛読ありがとうございました。この機会を設けてくれた木津川アート代表の佐藤さん、編集担当の三谷さんにこの場を借りてお礼を申し上げます。その後のロンドン・ハトの消息は知れませんが、ロンドンを訪れた際には気をつけてハトを観察してみてくださいね。
それでは良いお年を!

posted by ハト_pigeon at 18:14| Comment(0) | 日記

2013年12月02日

London Pigeon’s Art Views Vol.5

“ごちそうが隠れている雲が、Serpentine湖の北に浮かんでいるっていう噂、聞いたことある?” 近所に住むGillete(ハト)がそんな夢のような話をはじめます。Serpentine湖といえば、1730年代にHyde Parkの中央を流れていたWestbourne川を塞き止めて周辺の11の自然の湖を統合し建造した湖で、当時の人工湖としては画期的な自然に近い姿でくねくねと蛇行しているためSerpentine(蛇)と名付けられたそう。ロンドンの中心にありながらこの湖は野鳥の宝庫でもあるし、早速Gilleteと雲の正体を確かめに行くことに。

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Serpentine Sackler Gallery

家から5マイル南へ、更に湖の北の起点のイタリアンガーデンを南下すると、噂の雲を発見!雲のまわりにはガラスのバリアがあって、中を覗くと白い雲の下は白い花で飾られ着飾った人間達が食事中。まるで結婚式場か何かのような雰囲気で、とてもハトが気軽に入れるような感じではなさそう。仕方なく隣のレンガの建物に目をやると“Serpentine Sackler Gallery”という表示が。どうやら数ヶ月前に新しくオープンしたという Serpentine Gallery の別館のよう。人ごみに紛れて中へ。

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©Adrián Villar Rojas

おおっと、いきなり巨大な象に踏みつけられそうに!しかもこの象、インドの神話のなかの世界を支える象のように建物自体を支えている様子。よく見ると粘土で造られた彫刻。

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©Adrián Villar Rojas

更に進むと古墳の石室を彷彿させる建造物が。こちらもやはりカチコチになった粘土で造られていて、壁のあちこちにはひびが。重厚で狭い入り口から奥に向かいます。

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©Adrián Villar Rojas

中はありとあらゆる物が陳列されていて、まるで考古学博物館の研究室のよう。二千点以上の造形物 ー ミケランジェロの彫刻の複製、ロボット、猿、魚、人、宇宙人、電子部品などが、すべて手でこねられた粘土で精巧に造られていて、そのオブジェのなかには芽の出たジャガイモなどの植物が埋め込まれているものも。

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©Adrián Villar Rojas

これらはアルゼンチンの作家、Adrián Villar Rojas のインスタレーション作品、“Today We Reboot the Planet”(只今地球再起動中)。作品は全ての情報やテクノロジーが失われ、化石化してしまった現在の世界を表現したもの。そしてそれを発掘した未来の何者かが、ジャガイモなどの植物を埋め込んだりするという原始的な方法でなんとか化石に命を吹き込めないかと試行錯誤している状態を表現したようす。実際ジャガイモの芋の部分はキイロショウジョウバエや大腸菌などに共通する有機体として基本的な細胞組織をもっているため電子伝達実験に適しているとか。さらに土壌から精製された土である粘土を焼かずにあえてそのまま使用することで、生態系のはかなさ、壊れやすさを表現しているといいます。

また、床と壁に敷き詰められたレンガは、ギャラリーの建物が19世紀初頭に建てられたレンガで囲まれた軍用の火薬庫であったということから、故郷のアルゼンチンのRosarioにある伝統的なレンガ工場で職人達と手作りで制作したそう。



何と言っても我々鳥類は、約6,550万年前の恐竜が絶滅したことで有名なK-T境界絶滅イベントを生き延びた、恐竜の血を引く直系の子孫。テクノロジーなどに頼らずに生きているし、化石化なんて関係のない話と思いながら眺めていると、目の前の展示棚に化石化した雀のような小鳥の姿が。ハトは都市部で繁殖し、雀より人間に依存して生きているから人間と共倒れかも!?そういえばGilleteが見当たらない、まさかその辺で化石化してるのでは?と首を激しく前後に振りながら出口に進むと何とそこは最初に見た雲の下の世界。ごちそうが並び白い花が咲き乱れ、ここは天国?と思ったのもつかの間、速攻で黒いスーツを着た人間に追い立てられ、外の世界へ。

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Serpentine Sackler Gallery。左の増設部分がレストラン、右がギャラリー、建築はZaha Hadid

そこには湖のほとりで子供の食べ残しのワッフルをついばむGilleteの姿があり、ほっと鳩胸をなで下ろしました。

それではまた次回!


posted by ハト_pigeon at 17:41| Comment(0) | 日記

2013年11月05日

London Pigeon’s Art Views Vol.4

今日はロンドン中心部のトラファルガー広場(Trafalgar Square)での集会の日。National Galleryの目の前のこの広場は、かつてハトのメッカとして知られ、子供達や観光客にハトの餌を売る業者も多く、ピーク時の昼時には4000羽が集った広場でした。

ところが2003年に当時のロンドン市長のKen Livingstoneによって罰金を伴うハト餌付禁止令が発せられると、その数は一気に200羽に減少。更に市長はHarris Hawk(鷹の一種)を毎日昼時に見張り番として雇ったものですから、今ではもう恐ろしくてうっかり近づけない場所にしまったんです。 市長は、“周辺環境を汚し、衛生上よくないから、ハトを追放する”って。ハトに言わせれば、人間程あからさまに環境を破壊し、様々な交通手段の使用や物品の移動によって病原菌をまき散らす生き物もいないと思うんですけど。とはいえ、そんな人間達に依存しながら我々ハトの多くは生きているんです。

集会は鷹の現れない午後3時。東ロンドンの家から3.4マイル程の距離ですが、そんな訳で気を引き締めていきます。でもせっかくセンターに行くのですからまずはWaterloo橋に飛んでテムズ川を眺めてから行くことに。

橋の手前の王立裁判所に差し掛かると向かい側の70年代のオフィスビルに“The Moving Museum”という表示が掲げられています。こんなところに美術館あったかなあ?と早速入ってみます。


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The Moving Museumの入り口


床のカーペットは剥がされ、むき出しになったコンクリートの壁や天井からはパイプや配線がぶら下がっていて、もはや空間そのものが現代美術作品。 ハトの巣作りにも良さそうな。The Moving Museumというのは色々な国を廻る移動式の美術館ということのよう。トイレから何から機能的なものが全て取り払われた広大な展示会場では31名の作家による200点もの作品が展示中。


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"From WOWOW! to NOW NOW!, Part 1" 2013 ©LuckyPDF


スケールの大きい絵画や彫刻が並ぶなか、メディアオフィス?のような空間が現れます。学校のバナー、パブの看板、積み上げられたTV、イベントのポスター。よく見るとTVに映っているのは通常のTV番組ではなくてアーティストやその作品をテーマにした番組の数々。この作品は南東ロンドンを拠点にグローバルに活動するLuckyPDFのインスタレーション。LuckyPDFは、地元の作家やそのコミュニティ、学校とのコラボレーションなど、南東ロンドンのアートシーンをTV放映やネット中継などのメディア手段を使って拡散するアート•コレクティブ。


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"Hell Screen" 2013(一部分) ©Sam Austen


同じメディア•アートでもこちらは、Len Lye(1901–1980)やOskar Fischinger(1900–1967)などの初期の実験映画やキネティック•アートのパイオニアから影響を受けたというSam Austenの作品。Austenの揺れ動く彫刻作品と投影、 色鮮やかなSFコミックを彷彿とさせる映像作品はまるで一昔前にタイムスリップしたかのよう。


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"Still Life" 2013 ©Samara Scott


地中海地方の壁画のような明るい色彩の絵画はSamara Scottの作品。一見、床や壁に絵画が並べられているように見えますが、実は床の絵は直にそこにあったカーペットの上に描かれ、壁画は直接ビルの窓ガラスに描かれています。


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"Still Life" 2013(一部分) ©Samara Scott


近づいていってみると、ほら、Scottの絵の中に車や人の行き交う夜のロンドンの町並みがとけ込んでいます。
夜のロンドン?おっと、時刻はもう午後5時半!集会のこと、すっかり忘れていました。でも大丈夫、集会の後のアフターパーティーが広場近くの St James's Parkで行なわれ、ディナーを用意してくれる餌付けのおじさんが現れるのも6時前後という情報はキャッチしています。今から飛べば余裕。
それではまた次回!



posted by ハト_pigeon at 14:45| Comment(0) | 日記